ワールドメイトの常識的な経済情勢理解

日本経済復活に関する予言

 続いて、日本経済復活に関する予言について。

Nさんの陳述書は、日本経済についての予言を、いろいろと批判しています。しかし、今となって当時とその後の経済状況を振り返ると、予言の意図した方向が何となく見えてくる気がします。

まずは、20032004年当時のワールドメイト側の主張から。

 

==========以下、引用==========

 

 (Nさんの陳述書①で)日本経済の復活に関する予言が指摘されています。これも、日本の政治に関する予言と同様、神仕組のドラマの一端としてとらえるべき内容です。実際2000年には、日本経済に明るい兆しが見え始めており、先の見えない「失われた10年」といわれた90年代とは明らかに色彩が変わっています。

 例えば、戦後の高度経済成長の労働資源や技術の集積は、戦前戦中になされたとする説があります。歴史の評価は定まっていませんが、将来、本当に日本経済の大躍進が始まったとき、その基礎体力は2000年に完成したとされるかもしれません。「2000年に日本経済が磐石なものになる」という予言の評価をするには、いまだ時期尚早に過ぎるのです。

 なお、「2000年に日本経済が磐石のものになる」と述べた予言と、「失われた10年は、次の20年間に向かってのエネルギーを蓄える時期であった」とする予言は、何ら矛盾するところはなく、補足関係にあります。

(ワールドメイト陳述書② 13頁)

 

==========引用終わり==========

 

 事実として、「日本沈没」とまで言われた1990年代後半の金融、経済の危機から、日本は2000年頃に立ち直りました。そして、20022月から、69か月も続く、戦後最長の景気拡大局面に入ることとなります。

 

 では、なぜ、それが可能になったのか?

 諸説あるでしょうが、その大きな要因の一つは、小泉純一郎氏が首相となり、日本経済の膿を出しつつ、痛みをともなう構造改革を進めた事にあるでしょう。そして歴史を振り返ってみると、小泉氏が首相になれたのは、2000年の森喜朗総理の誕生にその起源がありました。

 

 2000年4月に小渕首相が急逝し、森首相が誕生しましたが、この内閣は、密室会談で決められたという批判を当初から浴びる、逆風の船出となりました。そして失言により国民の支持を失い、閉塞した政治・経済に国民の不満が高まる中、「古い自民党をぶっ壊して政治経済の構造改革を行う」とする小泉氏に、国民の大きな期待が集まったのです。

 密室での森首相指名についての大きな批判から、このときの総裁選は、オープンに国民に開かれることがテーゼとされていました。ところがその結果、広く国民の期待を集めた小泉氏が、永田町の常識をひっくり返し、総裁選に大勝利して首相となったのです。

 

 後日、森首相誕生から小泉首相への流れは、白山菊理姫の神様が仕組まれたことだということが明かされています。

 つまり、経済が盤石になる政治に生まれ変わる、その第一歩が、2000年の森首相誕生であったのだと私は思います。

 もちろん、小泉氏の政策については、もろもろの批判もあります。しかし、痛みのともなう改革なくして、経済再生も国の運営もとうてい不可能であることが、この時期、国民にある程度伝わったことは間違いありません。そして、2007年までに構造改革の歩みがあったからこそ、2008年のリーマン・ショックの波に飲み込まれずに、日本経済は生き残ったのです。

 

 無論、政治も経済も、複合的な要因によって動くものです。上記の内容の他に、下記のことも言えると思います。

 J・アベグレンは、1995年からの10年間を「日本経済再設計の10年」と呼んでいます(『新・日本の経営』 日本経済新聞社)。この10年間に、日本経済が鍛えられ、完成したというのです。

 19951月、クリントン政権の財務長官に就任したルービン氏によって、米国は金融帝国を国是とする戦略に大転換しました。その後、日本をはじめ世界各国が、米国の金融パワーによって、うんざりするほど振り回され、痛めつけられたのは、記憶に新しいところです。しかし、その暴風をしのぎながらも、日本は産業構造をふたたび転換し、日本的経営の質をさらに進化させたのです。


 とは言え、日本経済が乗り越えるべき課題はまだまだあります。為替リスクへの脆弱性、内需喚起の必要性なども指摘できるでしょう。現状はそうした課題の結果です。しかし、もう一段か二段の脱皮に成功すれば、世界経済が崩壊から立ち直った先に、日本が世界をリードする可能性があるのです。その淵源は、やはり2000年頃。すなわち、世紀末にかけての金融暴風を乗り越えて、日本はその基盤を整えたのだと、私は思います。


 もちろん、実際の経済状況をどう解釈するかは、ノーベル経済学賞の受賞者同士でも意見がわかれ、激しい議論になります。ここに示したのは、ひとつの有力な解釈に過ぎないでしょう。しかし、少なくとも、実際の経済情勢をきちんと説明できており、Nさん陳述書の主張より、ずっと正確だと私は思います。