ワールドメイトの常識的な国際情勢理解

Nさんの国際情勢への無理解 1998年李登輝訪日

 次の話は、国際政治上の大事件へと発展した、1998年の李登輝訪日問題です。ワールドメイトではこれを「アジア2カ国によるひっかけである」と喝破したのですが、Nさんの陳述書は「馬鹿馬鹿しいとしか言いようがありません」といいます。

そして、「李登輝氏の訪日によって日本が戦火の危機にさらされているなどと本気で主張しているのは、世界広しといえど深見東州ただ一人でしょう」と断言しています。はたしてそうでしょうか。

 

まずは、ワールドメイト側の見解です。

 

==========以下、引用==========

 

 国際政治学における危機管理論では、危機(クライシス)は連鎖反応を引き起こし拡大していく、ということは常識です。例えば、第一次世界大戦において、サラエボでの一発の銃声が、あれほどの大戦争を引き起こす端緒となるなど、当時予測した人はほとんどいませんでした。しかし、独仏英露などの大国同士が事態の悪化に備え、連鎖的に予備動員や開進行動を開始し、結果的に第一次世界大戦にまで発展してしまったのです。

 台湾海峡をめぐる台中両勢力は凄まじい軍拡を続けており、米国の艦隊も加わって、相互に挑発行為ともいえる実戦さながらの演習を繰り広げていることは、周知の事実です。こうした情勢の中、「李登輝訪日」という一石を投じることが、連鎖的危機に発展しないという証明を、Nさんはお出来になるのでしょうか。国際政治の基本的なことを踏まえていれば、「馬鹿馬鹿しい」と一笑に付されるのはどちらであるか、申し上げるまでもないことでありましょう。

(ワールドメイト陳述書②  13頁)

 

==========引用終わり==========

 

 真っ向勝負です。一般論として全く正しいと思います。

 そして、1990年代後半の国際情勢を見れば、間違いなくワールドメイト側の主張に軍配が上がると思います。李登輝と江沢民というふたりのリーダーに率いられた台中両岸が、何度も一触即発の危機を迎えたことは知られています。米国が第7艦隊を増強し、空母機動部隊が常時睨みをきかせたからこそ、ようやく戦争勃発が防がれたのです。


 図書館で調べてみましたが、中島嶺雄や平松茂雄などの高名な専門家が、当時からいかに警鐘乱打していたかが分かりました。そして、間違いなく、多くの研究者が、日本も火の粉をかぶる危険性を指摘していたのです。

 実際、中国は、米軍がフィリピンのスービック基地から撤退して睨みがきかなくなった直後から、東シナ海の南沙諸島を堂々と軍事占領しました。そして同じことを、日本の尖閣諸島に対しても企図しています。それゆえ、米国が日米安全保障条約の適用範囲に、尖閣諸島を含めるかどうかで、大変な違いになりますが、米国はこの点について、かつて言葉を濁していました。つまり、米国は中国の日本侵攻(尖閣諸島の奇襲占領)は、高い確率であり得ると考えており、この問題で自動的に米中衝突に巻き込まれるのを、警戒していたのではないでしょうか。

これらは、90年代後半からの安全保障問題の主要なテーマであり、日本の防衛政策や、自衛隊の編成や装備計画なども、こうした観点をもとに、大規模に改編されたのです(北方重視から西方重視へ。水際防御から機動防御へ)。これらは、別に専門誌ではなく、私たちが普通に読める一般の新聞や書籍に、すべて書いてあることから拾いました。

 

 無論、誰がどのような見解を持つのも自由です。しかし、「李登輝氏の訪日によって日本が戦火の危機にさらされているなどと本気で主張しているのは、世界広しといえど深見東州ただ一人でしょう」というNさんの個人的見解こそがずっと突飛な意見だと私は思います。